"ありえないなんて事はありえない"とは、
マンガ「鋼の錬金術師」(ハガレン)に登場する
グリードという敵キャラが言ったセリフ(第7巻/第27話/ダブリスの獣たち)である。
"ありえないなんて事はありえない" 生まれた経緯
鋼の錬金術師の世界では、
錬金術を使って人を作ることは禁忌として法律で禁止されているにもかかわらず、
グリードというキャラは自身が錬金術によって生まれた人間(ホムンクルス)であることを告白し、
主人公の弟のアルフォンス・エルリックが「ありえない」といった言葉に対する返答として、
「ありえないなんて事はありえない」と言った。
カッコいいし、なかなか哲学的で奥が深い言葉である。
作品のストーリーが進むにつれて、錬金術に関わる賢者の石やホムンクルスなど禁忌としていたことや、ありえないと思えることが次々を起こるようになるが、
その都度狼狽していてはキリがなく、受け入れて早く真理にたどり着くことが重要だった。
この言葉は、エルリック兄弟が信じがたいことでも受け入れて立ち止まらないようにするための助言にもなっている。
ちなみに「ありえない」なんてことは無いと格好つけて否定したグリードだが、
後に登場する"歳を取るホムンクルス"が登場した際に動揺し「ありえねぇ」と発言し、
仲間に「ありえない事はありえないんじゃなかったのか?」と馬鹿にされることになる。
「ありえない」なんて事はありえない 現実世界でも同じことが言えるか
アニメ・マンガの世界観だからこそ、”「ありえない」なんて事はありえない”というセリフに対して違和感が湧かないが、
実際、現実世界でも「ありえない」なんて事はありえない。と言えることは可能なのだろうか。
フランスの有名なSF小説家に"ジュール・ヴェルヌ"という作家がいるが、その人は
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という名言を残している。
IT機器の進歩や生活を豊かにしていくツールが次々に登場していく様子を見ると、確かにその通りであるだろう。
例えば、ドラえもんの世界でも人間が想像した秘密道具が多く登場するが、
中には現実世界で実現することになった道具もいくつかある。
- 想像「そっくり銅像キット」→ 現実「3Dプリンター」
- 想像「糸なし電話」→ 実現「携帯電話」
- 想像「イージー特撮ビデオ」→ 実現「動画加工アプリ」
- 想像「ウォータークリーンシップ」→ 実現「Seabin (シービン)」
- 想像「うそ発見器」→ 実現「うそ発見器」
- 想像「ほんやくコンニャク」→ 現実「自動翻訳機」
- 想像「宇宙探検ごっこヘルメット」→ 実現「AR(拡張現実)」
などなど。
今存在する機械やモノは、昔の発明家たちからすれば、「ありえない」事だったのはないだろうか。
10年後、50年後または100年以上先になる可能性はあるが、
人間が思い描くことが出来るモノや未来は、人間が実現できることの裏返しになるかもしれない。
"ありえないなんて事はありえない"という言葉も
どんな事にも「ありえない」なんて事は無く。そこには意味があるし、そうなる理由がある。
結局、「ありえない」という事自体が無いが故に生まれた言葉ではないだろうか。